今にも飛び出してきそうな力強い筆遣いと、耳の馴染みのいい文章。
私家版の絵本が編集者の目に留まり、2012年にデビューした人気作家きくちちきさん。
世界でも評価されるきくちさんの、秋がたっぷり詰まった絵本をご紹介します。
もみじのてがみ
カタカナ | あり(ルビなし) |
---|---|
漢字 | なし |
ページ数 | 32ページ |
本のサイズ | A4くらい |
おすすめ月齢 | 4歳 |
ISBNコード:9784338261326
どんな本?
「てがみだよ、てがみだよ。」
ある日、1羽のつぐみがねずみのところに飛んできます。
口には真っ赤なもみじの葉をくわえています。
ねずみはそれを見てこう言います。
「あ、もみじの手紙。ゆきふるの?」
ねずみはそのもみじを持って、近くにもみじの葉がないかと探しに出かけます。
山の中に赤を見つけて「あった!」と近づいてみると…
それは、きのこ。
そしてたまたま近くにいたりすと一緒にもみじ探しを続行します。
しばらくするとまた赤を見つけます。
「あった!」と近づくと、それは椿の花。
そこでもたまたま近くにいたひよどりを誘って3匹で探し続けます。
こうして自分たちの住む山の中でもみじを探す動物たち。
もみじの葉に、文字は書いてありません。
動物たちは、真っ赤なもみじから何を感じているのでしょうか?
この絵本は、スロヴァキア共和国で開催される世界最大規模の絵本原画展であるブラティスラヴァ世界絵本原画展の金牌を受賞しています。
絵は立って描く、筆を寝かせず立てて描く、などきくちさんの独特のスタイルは絵の迫力や躍動感を生み出します。
動物たちが紅葉を探すお話、表紙から裏表紙まで秋の雰囲気がたっぷりの絵本です。
感想
きくちちきさんは、大人にも根強いファンが多い人気作家さん。
実は男性で、もとは建築を学んでいたなど変わった経歴の持ち主でもあります。
今回本屋さんで秋の絵本を探していた時に、その赤ともオレンジともとれる絶妙な表紙に一目ぼれしました。
使っている色はそんなに多くないのですが、それが紅葉の美しさを際立たせています。
幼稚園の娘にとってはその色の少なさが物足りなかったようですが、紅葉満開のページでは2人で「うわー!」としばらくじっと眺めてしまいました。
娘はまだ絨毯のように敷き詰められた紅葉を見たことがありませんが、実際に目にした時の感動を絵本でも楽しめるのは嬉しいです。
『もみじの手紙』というタイトルからてっきり文字が書かれている手紙が出てくるストーリーかと思っていましたが、届くのはただ1枚のもみじです。
でも、動物たちはそのもみじを見て「あっ!もみじだ。もみじが真っ赤に色づいているということは…」と季節を感じるのですね。
イラストもストーリーも、風情を感じる素敵な絵本です。