1964年にアメリカで生まれ、その作品のすばらしさから世界中で翻訳された絵本があります。
日本でも『おおきな木』というタイトルで2度翻訳された作品。
今回ご紹介するのは、英語の原作です。
私はこの絵本、英語版を読んで本当に良かったと思っています。
The Giving Tree
カタカナ | ー |
---|---|
漢字 | ー |
ページ数 | 55ページ |
本のサイズ | A4くらい |
おすすめ月齢 | 6歳 |
ISBNコード:9780060586751
どんな本?
ある1本のりんごの木と、男の子のお話。
りんごの木は、男の子が大好きでした。
男の子は毎日木のところに来て、葉っぱを集めたり、葉っぱの冠を作って森の王様ごっこをしたり、枝にぶらさがって遊んだり、りんごの実を食べたり、かくれんぼをしたり…
そして疲れると、その木の陰で眠りました。
男の子は、りんごの木が大好きでした。
しかし、時が過ぎ。
男の子は成長しました。
りんごの木は、一人ぼっちになりました。
そんなある日、久しぶりにやってきた少年。
りんごの木は言います。
「おいで、ぼうや。また私の幹に登って枝にぶらさがって遊ぼう。そしてりんごを食べて私の木陰で遊んでくれたら、私はとても幸せ。」
しかし少年は言います。
「僕はもう登ったり遊んだりするような年じゃないよ。それより物を買ったりする方が楽しいから、お金をくれない?」
りんごの木は答えます。
「ごめんなさい、お金は持っていないの。私には葉っぱとりんごしかないけれど、私のりんごをもいでそれを売ったらお金になるわ。そうしたらあなたは幸せになれるでしょう。」
少年は迷うことなくりんごを全てもいで去っていきます。
でも、りんごの木は幸せでした。
そしてまた長い時間少年は現れず、りんごの木は寂しくなりました。
そんなある日、すっかりおじさんになった男の子が現れました。
「おいで、ぼうや。私の幹に登って枝にぶらさがって遊ぼう、そうしたら、私はとても幸せ。」
でもおじさんは答えます。
「忙しすぎて木に登る暇なんかないよ。それより妻と子供と住む家が欲しいんだ。家をくれない?」
りんごの木は、答えます。
「私は家を持っていないの。でも私の枝を切って家を作ればいいわ。そうすればあなたは幸せになれるでしょう。」
おじさんは、迷うことなく枝を全て切り取って行きます。
でも、りんごの木は幸せでした。
そしてまた長い時間男の子は現れず…
年をとり純粋な気持ちを忘れた男の子と、何年経っても変わらぬ無償の愛で男の子に自分の持つすべてを与え続けるりんごの木。
それは子を育てる親の姿そのもの。
寂しくても、理不尽でも、自分の何かを失ってでも、幸せになってほしいというただその気持ちだけで動き続けるりんごの木。
それに気付かず自分の要求ばかりの男の子。
最後、切り株だけになったりんごの木と、よぼよぼのおじいさんになった男の子。
その切り株に腰を下ろして、男の子は何を思うのでしょうか。
ただ一心に男の子の幸せを願うりんごの木の姿に、読む人それぞれが考えさせられる1冊です。
感想
読んでいて、色んな気持ちが重なって、とても感銘を受けた作品です。
自分が受けた親の無償の愛、そして今自分が子供にそそいでいる愛情。
どうしてもりんごの木に母である自分を重ねてしまい、これから先の子育てを想像して切なくなったり、自分は何を与えられるだろうと考えたりしました。
この作品は、日本語訳もされています。
私は原書しか読んだことがありませんが、レビューを見ると日本語訳に違和感を感じる方が少なからずいらっしゃるようです。
ぜひ日本語版も読んでみようと思いますが、とても深くメッセージ性のある作品なので敢えて原書で読むのもおすすめです。
英語だと、自分の中で自分の思うニュアンスに訳して読めてスッと言葉が入ってきました。
英語は易しく、大人であれば問題なく訳せるレベルだと思います。
この絵本を目で読んだ時は切なさや無償の愛の大きさに感動して読み終えたのですが、文章を日本語に訳して夫に説明していたら、ボロボロと涙がこぼれてしまいました。
幼い頃何も考えずただ楽しく過ごしていた時間を思い出し、成長を受け止め、それでも親はいつまでも親で…
根本にある「あなたに幸せになってほしい。」という願いは、ずっと変わらないと思いました。
親にとって子供は何物にも代えがたい宝物。
どんなに粗末に扱われても、それでも自分の持てるもの全てを与える。
りんごの木は、幸せでしょうか?
大人にこそ読んでほしい、きっと心に響く1冊です。